これも観たい、あれも食べたい!好きなことだらけのメモ

インスタ映えも女子トークももういいや。30代も半ば、仕事も家庭も一応落ち着いてるけど、自分の生涯をかけてやりたいことってなんだっけ?のライフワーク探しを、あれこれ悩みつつやってみる日記です

視点を変えれば、そこには壮絶な愛の物語が。「博士の愛した数式」

本屋大賞、という賞とともに登場した、普段あまり小説を読まない人にも広く人気の有名な作品です。本棚の隅で見つけて、久々に再読。

素数友愛数、ルート、と日常ではなかなか触れることがない数学の世界をほんの少し、上の甘いところだけを楽しむ気楽さ。主人公の私、と息子のルート、博士の3人の、強く握ればすぐ壊れてしまいそうな、儚くてその分強く美しい交遊に、とっぷり引き込まれてしまいます。 

だけど、前に読んだときは深く考えなかったけれど、3人のことを見守り続ける、博士の義理の姉、Nがそこには存在しています。彼女は、私、には決して作れない、塗り重ねられない博士との記憶を持っています。けれど、博士の時が止まった何十年もまえから、もう一秒も積み重ねることはできない、という残酷さ、絶望の、彼女だけの長い長い時間。

 

もし自分の一番愛する人の時計が、急に、永遠に止まってしまったら。そこに子供という、溌剌とした全く新しい存在が現れて、博士が無垢な心で慈しむのを見てしまったら。

物語が全然違う姿で、立ち上がったような不思議な体験をしました。またふと数年後に読み返したら、今度はどんな出会いになるでしょう。

 

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)